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*マルセイユタロットについて*
タロットを発売した2013年から10年がたつ間に、少しずつではありますが、国内外のマルセイユタロットの愛好家の方々に愛でていただいて、なんだかんだとやっているうちに、いつのまにかミニとスタンダードを合わせて2,000個以上のタロットが皆さまのもとに旅立っていき、日本でのマルセイユタロットの認知度も徐々にではありますが、上がってきたように感じています。
それでも、まだまだ日本でよく知られているライダー版(もしくはウェイト版)に比べると、マルセイユタロットについてご存知ない方も多いかと思いますので、ここで少し、タロットやマルセイユタロットについてのお話をしていこうかと思います。
☕タロットの起源のお話☕
古い時代のタロットの起源についてはいろいろな説があるんですが、現物のカードが残っていなくて有力な証拠がないために、けっきょくどうしても推測の話に終始してしまうんですね。なので、今後また何か歴史的な発見があればこれまでの説がくつがえされる可能性もあって、そこに期待しつつではありますが・・・、今わかっていることについてお話ししていきましょう。
古い時代のマルセイユタロットのひとつ、私がタロットを作るときにベースにした「ピエール・マドニエ版」は、現存するマルセイユタロットの中でもっとも古いもので1709年に作られたものです。マルセイユタロットの中でも有名な「ニコラ・コンヴェル版」は1760年に作られたとされています。「ライダー版(ウェイト版)タロット」は、マルセイユタロットをもとにして生まれたもので1910年製造ですが、この間でも200年近い年代の差があります。
さらにそれより古い時代、人々が盛んにタロットカードでのゲームに興じているのを危惧したヨーロッパの国々では、タロットカードの使用を禁止するなど取り締まりが強まったとされていますが、それが1300年代から1400年代にかけてです。・・・となると、それよりかなり前から使われていただろうと想像できますね。1460年頃には、現存する最古のタロットのひとつでマルセイユタロットのもとになったとされている、ヴィスコンティ・スフォルツァ版タロットが作られたといわれています。
それで、そのころ日本はどんな時代だったのかというと、なんと!足利尊氏が征夷大将軍になった・・・とかいう時代です!!。
文化の面では、「徒然草」や「金閣」が作られた・・・とか・・・。
そんな時代なんですよ!
ええーーっ!!ってびっくりしますよね!
そして、現代になってもなお、世界中で愛されて使われ続けていることを思うと、タロットがもつ、今も色あせない私たちを魅了する不思議な力を感じずにはいられません。
☆マルセイユタロットとは?☆
では、その「タロット」の中でも「マルセイユタロット」とはどういうものかというと・・・。文字通りマルセイユ産のタロットだけを指す・・・というわけではないんですね。
1600年代頃からヨーロッパで「タロット」と呼ばれていたカードの大部分はフランスのマルセイユで製作されていました。マルセイユは地中海沿岸の港町としてアジアやアフリカの文化を取り入れやすい地域だったことと、古くから製糸業や印刷業も盛んで活字の印刷機が発明される前から木版印刷や銅板印刷の高い技術があり繊維産業の中心のプロバンス地方にも近かったことから、カードに色をつけるステンシル(型紙)技術は染色技術を応用したものでした。その後、産業革命が進むとカードも機械で印刷されるようになっていくんですが…。イギリスやドイツではタロットカードからゲーム専用のカードがトランプへと発展したといわれていますが、フランスやイタリアではタロットカードがそのままゲーム用として使われて、タロットゲームは室内娯楽として親しまれ、今の私たちの家にたいていトランプがあるように、どんな家庭にもタロットのデッキがあって、需要があるのでいろんなカードメーカーがタロットを製作していたんだそうです。
そして、オカルト研究家のパピュスという人が、1889年に著書の中で当時なかなか手に入らなくなっていたマルセイユのニコラ・コンヴェル版を「マルセイユのタロット」と紹介したことから、この様式のタロットがマルセイユタロットとして広く知られるようになっていきますが、「マルセイユタロット」という呼び名というのは、日本で有名な「ライダー版(ウェイト版)タロット」とは違って、特定のデッキを指したものでなくて、伝統的なスタイルを保ったタロットの、国籍や時代を問わない「総称」として、タロットの1つのブランドという位置付けになっていくんですね。
マルセイユタロットはデザインの違いから大きく2つのグループに分けられていて、それぞれ「タイプⅠ」「タイプⅡ」と呼ばれています。その違いは例えば、「恋人」のカードに登場する天使が「タイプⅠ」では目隠しをしていて「タイプⅡ」では目隠しがないとか、「月」のカードの月の顔が「タイプⅠ」では正面を向いていて「タイプⅡ」では横顔で描かれていたり・・・というようにいくつも違いがあり、絵のタッチもかなり異なっています。初期の頃は「タイプⅠ」が多かったものの、その後主流になったのは「グリモー版」や「ニコラ・コンヴェル版」などに代表される「タイプⅡ」のほうで、「ピエール・マドニエ版」もこの「タイプⅡ」です。
そして今、フランスマルセイユ出身のイヴ・レノーさんの「古典タロット復刻プロジェクト」によって数々の古いタロットが復刻され、貴重な古典マルセイユタロットを手に取って見ることができる私たちはほんとうに恵まれていて、幸せな時代だな~と思っています。
──mamanmiyukiタロットの世界 増補改訂版より抜粋──